高校生による舞台芸術公演の劇評(レビュー)を募集

第一回グランプリ結果発表

最優秀賞

石本秀一 (早稲田実業学校高等部 1年)
劇評タイトル:「MIWA―愛の伝道師その人生とは

【公演名】MIWA
【主催団体/劇場名】 NODA・MAP / 東京芸術劇場 プレイハウス

優秀賞

名前 高校名 学年 劇評タイトル 公演名 主催団体/劇場名
伊澤拓人 麻布高校 3年 『MIWA』概観 MIWA NODA・MAP/
東京芸術劇場 プレイハウス
グンナレ 更 東京学芸大学附属高等学校 2年 魔女となった観客 マクベス Macbeth Bunkamura/
シアターコクーン
高崎麻里亜 千葉県立船橋高校 2年 「体感‐MIWAの世界」 MIWA NODA・MAP/
東京芸術劇場 プレイハウス
高野暉子 埼玉県立芸術総合高等学校 3年 教育の影響力 フランケンシュタイン 東京グローブ座/
東京グローブ座
近澤璃希 渋谷教育学園幕張高等学校 1年 深く掘り下げた新古典『マクベス』 マクベス Macbeth Bunkamura/
シアターコクーン
奈良弥春 都立若葉総合高校 2年 衝撃が半端じゃない バカロックオペラバカ 『高校中パニック! 小激突!!』 大人計画/
PARCO劇場
蓮見厚輝 筑波大学附属駒場高校 1年 悲劇への供物 珈琲法要 河村企画/
アトリエ春風舎
平川千晶 横浜雙葉高等学校 2年 見るべきもの 木の上の軍隊 こまつ座&ホリプロ/
天王洲 銀河劇場
藤井颯太郎 兵庫県立宝塚北高等学校 3年 原作ピグマリオンと名作マイフェアレディ ピグマリオン 新国立劇場/
新国立劇場
山中 友恵 聖心女子学院高等科 2年 愛され続けている舞台 レ・ミゼラブル 東宝/
帝国劇場


選考委員講評

劇評の新しい表現を

扇田昭彦

 グランプリを獲得した「MIWA-愛の伝道師その人生とは」は、筆者の分析力と批評性が感じられるいい劇評だった。公演を見ていない人にも舞台の様子が分かるように書かれていて、野田秀樹の演出と俳優たちの演技の魅力にもきちんと具体的に触れている。筆者自身の感動と若々しい知性が感じられる評だった。
 十代は一生のうちでも感受性がもっとも鋭敏な時期に当たる。そういう活発で柔軟な心から生まれる劇評には、経験と知識に支えられたプロの劇評とはまた違う新しい視点と文体があるはずだ。高校生劇評グランプリには、これまでの劇評の定型にこだわらない、新しい表現の可能性を期待したいと思う。

劇評グランプリに期待します。

全国高等学校演劇協議会事務局長 阿部 順(千葉県立松戸高等学校教諭)

 この劇評グランプリを実現したITI Japanese Centreの皆さまに、そして何よりもこの企画に果敢に挑戦した高校生の諸君に敬意を表します。
 プロの舞台を高校生が評し、さらにその劇評が評価されるというのだから、投稿するに当たっては大きな勇気が要ったことだろう。ただ、新聞でもネットでも劇評は常に読者の批評にさらされているわけで、演劇が評価され、またその劇評も評価されるという構図は、長い歴史の中で常なるものなのだと改めて思う。
 舞台と劇評は切っても切れない関係にある。劇評のない舞台なんて、味気ないではないか。優れた舞台は優れた劇評を産み、優れた劇評はその舞台をさらに進化させる。劇評には人を劇場に誘う魔力がある。劇評は、舞台を観終わった後で、再度その時間空間を他者と共有させてくれる再現力を持つ。
 さて、今回は高校生の皆さんがその「劇評」を書いた。それだけでも皆さんは正しい選択をしたと言ってよい。劇評を書くと思って舞台を観るのと、あるいは劇評を書こうと思って舞台を思い返すのと、そうでないのとでは全く違う。皆さんは、考え、言葉にするという行為を通して、そこに日常生活では見えてこないものを見たし、自分の中の気がつかなかった感性を引き出したことだろう。
 それだけに、その「劇評」を「作品」として仕上げる技術はみんな学んで共有した方がいいだろう。よく学校で国語の先生から「小論文と作文は違いますよ。」と言われるように、「劇評と感想文は違う」のである。しかし、小論文は何回も書いて適切な人にきちんと添削してもらうと誰でも格段に向上する。劇評も同じだろう。となると、私が属する高校演劇の世界では、「講評委員会」と言う組織を作り、大会で観た劇をみんなで討論した後、指導者のもと劇評としてまとめている。こういったこともさらなる劇評レベルアップへ寄与できるだろう。
 最後に、高校生が書いた劇評の魔力で、もっと多くの高校生が劇場に足を運ぶようになることを大いに期待しています。

舞台を言葉にして心にとどめ、未来の読者に届ける

高野しのぶ

 素直な気持ちをてらいなく流れるように綴った若者らしさみなぎる快作や、舞台で描かれていた課題を自分自身のこととして真摯に考察する力作など、読ませる劇評ぞろいでした。行間からあふれ出る高校生ならではの柔軟でみずみずしい感性に触れ、私自身が新鮮に舞台作品と出会い直すことができました。
 知的好奇心を存分に働かせて、舞台を観て感じたことを自分の言葉で書き留めれば、作品を心身のより深いところにとどめ置くことができます。そして作品の作り手と他の観客、さらには作品を観ていない人とも感動を共有することができるのです。
 まずは気軽に書き始めてみて欲しいと思います。劇評の書き方は書きたいと思った時に学べば大丈夫。嘘のない言葉は広く伝播し、思いもかけない出会いを沢山もたらしてくれるはずです。遠い未来の読者にもあなたの劇評を届けてください。

フレッシュな<劇評>を!

田中綾乃

 最終選考に残った評の多くから、高校生たちが生の舞台から受け取った感動や衝撃、そこから紡ぎ出した思考を<劇評>ということばの世界で自分なりに表現しようと試みていることが伝わってきた。
 その一方で、あらすじや概観だけになってしまったもの、感想文に終始したものなどを目にし、あらためて「<劇評>とは何か?」という問いを突きつけられた思いもしている。書き方をはじめ、短い字数の中でどれだけの情報を採り入れるのか等のテクニック的な部分では、今後、改善が求められるが、感性豊かな高校生たちが舞台から汲み取ったフレッシュな<劇評>や選考委員たちをあっと驚かせるような鋭い<劇評>が出てくることを期待している。
 また、今回、取り上げられた舞台公演を見ていると、高校生が観やすい作品だったのは確かであるが、やや偏っている印象も受けた。今後、小劇場の公演や首都圏以外の公演を対象にする評が出てくるためにも、多分野での舞台公演の充実や学生割引の導入等が求められる。

がんばれ、ミュージカル評

萩尾 瞳

 第一回の高校生劇評グランプリ受賞作は、最優秀賞の対象公演『MIWA』をはじめ、ほとんどがストレート・プレイ評だった。ミュージカル評は1本だけというのが、個人的にはとても残念だ。応募作のほぼ半分がミュージカル評だったことを思えば、なんとも低い“打率”だと、ちょっと嘆息してしまう。
 もっとも、ミュージカルは、その公演の敷居の低さに反して評を書くのは意外に難しいのだろう、とも思う。ほとんどのミュージカル評が「楽しかった」「ワクワクした」「感動した」という印象だけで終わっていて、その理由の追及、つまり作品分析に至ってないのだ。たぶん、楽しさや感動が多くの場合は音楽やダンスに起因しているため、分析しづらいのだろう。けれど、そこをなんとか自分の言葉で表現してほしいのだ。願わくば、次回は、選ぶのに悩むほど素敵なミュージカル評がたくさん集まらんことを。

ページTOPへ